ATOMCOFFEEでは、イルガに限らず、焙煎度合いはすべてミディアムロースト(中煎り)です。理由はこれまでもイルガチェフライフでお伝えしてきたように、苦味や酸味の味付けをできるだけ少なく、生豆のキャラクターを活かしたいためです。

苦味、酸味とは異なる領域で味覚として感じるのがモカフレーバーだと思います。

とても個人的な考えですが、苦味と酸味は舌で味覚を捉える感覚で、モカフレーバ(及びその他のキャラクター)は舌・口腔・鼻腔ぜんたいで捉えているような気がします。良質なモカフレーバを口にふくむと口腔から鼻腔にフレーバーが漂いとどまっているのを感じます。

イルガをのんですぐにモカフレーバを体感される方は多いですが、わからないんだよなあという方は、とてもシンプルですが、モカフレーバをまとっているコーヒーとそうでないものを交互に飲んでみるととってもわかりやすいと思います。

これまでのような、わかるひとだけわかるテイスト領域ではなく、コーヒーを楽しまれるすべてのひとに体感して頂けるものであるよう努めていきたいと思っています。



◎『モカフレーバー』と『フレーバーコーヒー』は関連性はありません。フレーバーコーヒーというのはコーヒーに香りや味を付着させて商品化させているものですが、モカフレーバーやキャラクターは生産者がつくりだす生豆が持つ本来のテイストです。





③情熱・根性的なものが足りない

さきにあげた①・②に対して時間をかけていくあいだ、情熱と根性をあてる先を大間違いしていたことに気づきました。

『焙煎技術がすべて』という考えから、『生豆が大切であり生産者が大切』という考え方にシフトしいくなかで、生豆を見極めるカッピング(テイスティング)スキルが自分には必要だと感じました。よいものを正しく判断する能力の向上がシンプルな焙煎へ繋がっていった気がしています。

焙煎に集中していた情熱は、カッピングスキルの向上にむけていくことにしました。

良質なコーヒーには果物や花、ナッツやチョコ等のキャラクター、舌触りはベルベットやシルクなどで表現されることがあり、それでは各々の味覚を自分が捉えていないとわからない。ならばたくさんのものをとにかく飲み食べしようという結論に達しました。

季節の果物をたくさん食べました。
(これは林檎なんだ、これは桃なんだと覚えるように)
花屋さんに行って店頭でいろんな花をくんくんしました。
(買ってやりましょう)
カカオ純度の高いチョコレートを食べました。
(食べ過ぎ注意)
布生地を口に含んだりもしたし、ナッツ缶を買い込んだりもしました。
時にはハイチュウや果汁グミを食べたり。
その繰り返し繰り返しです。

すぐに結果がでる訓練ではないし地道な作業の繰り返しだけど(食べ過ぎてぽっちゃりさんになった時もあったけど)、自分なりに考えながら体感したことが先に繋がったと思っています。ATOMCOFFEEをはじめた今も常にこの部分は鍛えないといけないと思ってやっています。


「向かっているんだから辿り着けると思っている」というとてもシンプルで力強い言葉。当時読んでいた漫画のなかでそういう感じのセリフがありました。
情熱は熱いうちにその対象にたたきこんでいると、鉄のように固い意思と力になると思います。



※今回はすこしイルガチェフのことから離れてしまいましたが次回からまた濃厚な話に向かいます。

続く




②焙煎に問題がある

自分がおもう質のよい生豆を入手しても、モカフレーバーがでるときとでないときがあって、ここは自分の焙煎技術に問題があると自覚。それまでやっていた焙煎方式の見直し。

温度管理と、生豆の温度変化に伴う状態変化、この二点を自分なりに観察した結果、
1.焙煎機内上昇温度が一定でない
2.苦味か酸味がつよくのこる(焙煎による味付けをしてしまう)
ということが判明。

まっさらな状態から見直したい思いで、焙煎という名のつく書籍やWEB上のものをかたっぱしから読み返していきました。みんないろいろ考えていてすごいなあと素直に感動。コーヒーに魅了された多くの先人たちのがんばりがあって、いまのコーヒー界があるんだなあとあらためて学びました。

よみすすめていくなかでスカンジナビアエリアのロースターたちは、特殊かつシンプルな焙煎をしていることを知りました。とても簡単に言うと、初期段階から超高温状態で生豆投入、超高温保持、完結前まで温度調節無し、という焙煎。それまでは火力を徐々にあげていって当然と思っていたので驚きでした、とっても。でもこの方式が成功すれば自分の悩みは解決するんではと思いました。あと、生豆って自分が思っているよりもずっと頑丈だとも思いました。

その後いろいろ悪戦苦闘(は長くなるのでとばします)あり、自分なりにアレンジした結果、この焙煎方式によってモカフレーバーがひきだせるようになりました。超高温状態にして苦味と酸味をできるだけ消失させる焙煎。苦味と酸味の消失点(バニシングポイント)にあてる焙煎としてバニシングローストとよんでいます。詳細はブログ『ATOMコーヒーのつくりかた』参照ください  (Click!) 

※いまテストローストしたものをカップしながらブログをつくっていたのですが、新豆ついにきまりそうです、二種同時リリース予定です。ひとつは『リム』。手放しですばらしいコーヒーでした。

続く


イルガチェフのおいしさを知っていくなかで、自分でこの生豆を焙煎してみたいきもちになっていました。

サンプルロースターと生豆を購入し、自分の知っている焙煎方式で試してみるのですがモカフレーバーが全く出現しない!ここからとてもながーい試行錯誤がはじまります。この時期があっていまがあるのでこの暗黒時代も大切におもっています。当時の思いはブログ『ナックルボーラー』を参照ください。 (Click!)  

ただ、うまくいかないながらも、焙煎を繰り返している時間が純粋に楽しかったです。焙煎のにおい、チャフの出現、生豆のてざわり、なにをとっても自分にはあたらしい世界。そしてかなりの高揚状態だったと思います。はたからみるとちょっと遠慮したいくらいのやばめな人だったと思います。
ATOMCOFFEEの発想はまだなかったので、なんとしてもモカフレーバーをだしたいという思い一本でした。

当時の自分は焙煎が最重要と思い込んでいたので、現在の『コーヒーは生産者が第一』という考え方を持てるようになるのはもう少し先の話です。



かなり遅い気づきながらも(当時はただただ焙煎そのものが楽しかった)、焙煎後のイルガがモカフレーバーをまとわない仮説をたてました。

①生豆に問題がある
②焙煎方式に問題がある
③情熱・根性的なものが足りない


①生豆に問題がある

これが大きな最重要ポイントでした。それまで何度も焙煎を繰り返していた生豆は、イルガチェフという名前で販売はされているものの、加工方法や乾燥方法、標高、エリアなどの詳細は不明瞭なものが多く、生産地の情報がわからないものばかりでした。

まずは生豆の見直し。生産背景がみえるものに重点をおき、生豆の問屋さんを探しました。そこに重点をおくとわりとスムーズに、いくつかのすばらしい生豆に出会いました。生豆を探していくなかで、コーヒーは生産者が大切だなあと自覚したかもしれないです。同じイルガチェフでもモカフレーバーをまとっているものとまとっていないものの違いは生産工程が大きく左右するのかもとの気づき。焙煎を繰り返せば繰り返すほどに生産工程が最もコーヒーのテイストを左右するんだと自覚していきました。

コーヒーは加工方法によっても、標高によっても、日照条件によっても、エリアによっても、品種によってもテイストは異なってきます。
それまでは自分の焙煎技術でこのコーヒーを美味しくするんだ!と、当時は技術もないのに躍起になっていました。焙煎は時間にすると10分弱程(一回)ですが、生産者は一年を通してコーヒーを育てます。栽培、収穫、生産処理(乾燥・加工)、出荷までそれこそ子を育て旅立たせるように。

『生産者第一』生産を知れば知るほどに焙煎はお客様に飲んで頂く最終調整という考え方になっていきました。

※生豆を『なままめ』と呼ぶひとと『きまめ』と呼ぶ人とがいます。自分が教わったのは前者なので『なままめ』と呼んでいますがどちらでもいいと思っています。(正直自分は『きまめ』のほうがよびやすいとは思ってます。)

続く



「コーヒーではない何か」これはなんだろう。かすかに感じる苦味と酸味。それ以外の何かおおきなものをまとっているんだけどなんなんだろう。たとえるならばキンモクセイのようなつよくやわらかな香り、桃のようななめらかな甘さ(すべてのイルガがこう感じるわけではないですが当時飲んでいたイルガはこう感じていました)。『唯一無二の独特な香りと新しい甘み』。

この正体は通称『モカフレーバー』と呼ばれるものだとわかりました。良質なエチオピア産(イルガチェフエリアで収穫されたものであることが多い)のコーヒーだけがまとう、『モカフレーバー』。なんとも感動的な出会い。

ここでいう『モカ』は、海路で出発するエチオピア産のコーヒーはモカ港から出発していたことからきているのかなと思っています。国内の昔ながらの喫茶店にあるエチオピアコーヒーがモカコーヒーと呼ばれるのはモカ港が由来らしいです。

コーヒーにおいて苦味・甘み・酸味の世界しかしらなかった自分は強烈な衝撃でした。良質なコーヒーには苦・酸・甘の焙煎による味付けは必要としないレベルの『コーヒー本来の持つキャラクター』が存在することがわかりました。


『あたらしいのみもの!』と思うほど感動した自分はそれからは強烈にイルガチェフに惹かれ、あたらしいコーヒーの世界に惹かれていきました。スペシャルティコーヒーという概念が広がり、他銘柄のコーヒーを飲んでも正直イルガを越える感動をもったものはなかったです。

この生豆を自分で焙煎してみたいと思うようになり、フライパン焙煎からはじめました(一瞬で真っ黒になりイルガとはよべないものになったけど)。焙煎器を購入し焙煎を繰り返す日々。でも感動的なイルガチェフとはほど遠く、あの時感じた「コーヒーではないなにか」が全く感じられない。イルガチェフと名のつく生豆を焙煎しているのに何が違うんだろうか、加えて焙煎方法が間違っているのかと悩みます。

この時点で①「あの時感じたコーヒーではないなにかが出てこない」②「焙煎方法」、このふたつの壁を越えられずにいます。もがきにもがきます。この後ももがき続けます。

続く